スーパーコンピュータ「京」の成果をはじめとした重点課題2の研究を、映像や画像を使って紹介します。
脳は血液を循環させることにより、脳を構成する細胞や組織に酸素や栄養分を供給し、正常な機能を維持しています。しかし、常に脳の隅々の血管まで血液が送られる仕組みはまだよく分かっていません。また脳卒中や脳梗塞になった時に脳機能に障害を及ぼす程度を今はまだ正確には予測できません。
そこで私たちは、実際の脳血管の形状と解剖学的構造に基づいた全脳レベルの血管モデルをコンピュータ内に作り、脳内の血流や仕組みを理解するためのポスト「京」(スーパーコンピュータ「富岳」)を用いた大規模計算シミュレータの開発をしています。この映像は、全脳血管モデルを用いて「京」で計算した結果を可視化したものです。
時間 | 映像 | 解説 |
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1~6秒 | (1) Medical Image Based Modeling (医用画像に基づくモデリング) 左(Brain Surface)は、MRI計測から構築した脳形状。 右(Large Artery/Vein)は、脳血管内に挿入された造影剤のCT撮影から構築した主要な脳血管(動脈と静脈)。 |
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7~15秒 | (2) Mathematical Modeling of Small Vessels (微小血管の数値モデリング) (1)の脳形状と脳血管、そして数理モデル※を組み合わせて作り出した、動脈・静脈の末端が繋がった脳血管。解剖学的な特徴を満たした主要な脳血管と、仮想的に構築した医用計測では取得できない小さな血管から構成される。大脳全体を覆うように動脈(赤色)と静脈(青色)が分布している様子がわかる。 ※数理モデルとは、生体内の血管経路を再現(モデリング)するための模型を意味する。 |
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16秒~ | (3) CFD Simulation (数値流体力学シミュレーション) 脳循環の大規模血流シミュレーション 左右の内頚動脈と椎骨動脈から造影剤を模擬した液体を一定量流したシミュレーション映像。医用画像と数理モデルを組み合わせて構築した脳血管網。青色は左の内頚動脈、黄色は右の内頚動脈、赤色は椎骨動脈から入ってくる血液の流れ。 血液が、頸動脈と椎骨動脈から入ってきて脳全体に行きわたり、頚静脈から出ていく過程がわかる。 |
CFD:computational fluid dynamics
この映像は、分子の振る舞いを計算し心筋を収縮弛緩させて、筋肉の運動が生み出す血液の流れや血圧を計算し、物理的、生理的に本物の心臓と同じ動きをする人間の心臓をコンピュータ上に再現しています。
心臓を形づくる細胞の中にあるタンパク質の分子の動きから、心臓全体の動きを正確に計算することで心臓の動きをコンピューター上に再現することにより、まだよく分かっていない心臓病の原因を調べたり、最適な手術方法や治療後の状態などを事前に知ることができ、より安全で効果的な治療を行うことができるようになります。